研究目的

小規模自治体研究所は、平成の大合併の時代にあっても、自立の道を選んだ小規模自治体が、その住民とともに行う持続可能な地域づくりをサポートしてきた。とりわけ、東日本大震災後には、それまで行ってきた、県内外の各自治体の首長や職員たちとの研究会・シンポジウムの開催といった学術的な研究・交流活動に加え、避難指示地域の女性農業者たちとともに「かーちゃんの力・プロジェクト」を立ち上げるなど、実践的な課題にも大胆に取り組んできた。東北地方のみならず、全国的にも珍しい「小規模自治体」に焦点を絞った研究所として、持続可能な農村地域・地方都市のあり方について、国際比較も加えた学術的研究とともに、現場の課題に即した実践的な活動にも取り組んでいる。

研究メンバー

研究代表者(研究所長)

  • 塩谷 弘康

 

研究分担者(プロジェクト研究員)

  • 千葉  悦子 (副学長・行政政策学類教授)
  • 岩崎 由美子 (行政政策学類教授)
  • 佐々木 康文 (行政政策学類教授)
  • 荒木田 岳 (行政政策学類准教授)
  • 大黒  太郎 (行政政策学類准教授)

 

連携研究者(プロジェクト客員研究員)

  • 松野  光伸 (福島大学名誉教授)

 

研究活動内容

平成30年度の本プロジェクト研究所の研究・実践活動は以下のとおりである。

1.飯舘村との協定に基づく活動

2017 年4 月に、本学と飯舘村は、「までいな家協力協定書」を締結した。また、本学行政政策学類は村と独自に「復興連携協定」を締結し、飯舘村帰村後の復興にむけて、大学と村とがこれまで以上に密接に協働することとなった。小規模自治体研究所は、村と大学・行政政策学類との間にたって、協定に基づく具体的な活動を企画・実施する役割を担ってきた。その際、①村や住民の要望に基づき、協働で活動を実施する、②教員のみではなく、本学学生が活動の中心的メンバーとしてかかわる、③1 年間の成果を「形」として残し、村や村民に対してその成果を報告する、との方針のもと、以下のプロジェクトを企画、実現した。

(1)村民の自分史の制作

聞き取りを行ない、冊子体『飯舘村に生きて 20 人の軌跡』にまとめた。プロジェクトの開始にあたっては、飯舘村内にある「飯舘村サポートセンターつながっぺ」でイベントを開催して村民と学生の交流をはかるとともに、冊子の発行にあたっては同所で贈呈式を実施するなど、村民との交流を重視した企画を実現できた。マスコミ等でも大きく取り上げられて注目を浴びる成果となった。

(2)「フラワーガーデンマップ」の作製

村の住民からの相談を受け、村内各地で丹精込めた自宅の庭を見学者に公開している家庭を紹介する「フラワーガーデンマップ」を作成した。学生の取材から始まったプロジェクトは、学生による手書きイラストいりで手折りして作った「いいたてフラワーガーデンマップ」として完成し、現在、飯舘村の道の駅や役場等で配布されている。依頼者には大変好評で、続編の制作も要望されている。

(3)飯舘村佐須地区での「までいな休日2日間」の開催

飯舘村佐須地区との協働で、佐須地区に残る旧佐須小学校を舞台に、「までいな休日2 日間」を開催した。学生と住民との打合せを積み重ねて決まったプログラムは、住民のみなさんを「先生」、学生を「生徒」として開かれる1 日学校で、朝礼や校歌斉唱で始まり、「裁縫科」「歴史科」「食物科」「農業活動」の授業を行った。翌日には、スターバックス社の協力を受け、住民のみなさんをお招きして、のんびりコーヒーを飲みながら交流を楽しんでいただいた。とくに、住民のみなさんや参加者とともに挑んだ「飯舘検定2018」は大変好評で、イベントの恒例化とともに、今後の展開に向けた検討を行っている。

(4)集落との協働プロジェクトの開始

2018 年度は、村内2 集落(大久保外内、佐須)と協働で学生+住民とで農産物を生産して商品化するプロジェクトを開始した。大久保外内のみなさんとはエゴマ生産、佐須集落のみなさんとはひまわり生産を行い、それぞれの種を収穫したあと、搾油→瓶詰までを行った。今後、2集落とのさらなる共同で、「えごま油」「ひまわり油」の「商品化」、道の駅での販売を目指す。

(5)その他の飯舘村における活動

飯舘村役場からの依頼を受けて、「飯舘村文化祭」や「新春の集い」等のお手伝いを行った。飯舘村をはじめ、避難を経験した自治体において、帰村後の住民、とりわけ高齢者の生活をどう支えるのか、また、除染後の農地をどのように維持・活用するのか、住民の生業や生きがい作りは、引き続き大きな課題である。本研究所は、村役場、住民、村内外の住民グループ等と連携しながら、引き続き、この問題に取り組んでいく。

 

2.葛尾村復興住宅での活動

震災以降、毎年続けてきた葛尾村の住民グループとの協働を本年度も実施した。三春町恵下越にある復興住宅で、「福島大学行政政策学類生による歌謡ショー」を開催し、本学学生が住民のみなさんにとって懐かしい歌謡曲を披露した。また、住民グループのみなさんが準備した「ごんぼっぱ餅」「かぼちゃのスープ」に、住民+学生の協働で作った「ホットケーキ」を加えた昼食会とともに、大いに交流を深める機会となった。今後も、葛尾村の住民グループとの連携を継続していく。

 

3.福島県内の地域づくり活動

当研究所では、自治体や地域からの依頼・要望にこたえる形で、研究メンバー単独で、あるいは福島大学生とともに、地域づくりを積極的に支援している。平成29 年度も、震災前から金谷川地域の住民と行っている「Uプロジェクト」も継続的に活動した。また、本研究所は、地域と大学とが協働して農山村集落の再生に取り組む「域学連携」に力を入れており、県内各地の集落での実態調査やワークショップを重ねながら、「こどもマルシェ」や大学祭での地元野菜の販売などを行った。また、こうした新たな知見を教育に反映させるべく、小規模自治体研究所のメンバーが中心となって、総合科目「小さな自治体論」を開講し、好評を得た。

 

4.新たな研究活動の展開

持続可能な農村地域、小規模自治体の仕組みづくりを研究する当研究所は、震災前からの定期的な勉強会の実施に加え、震災後の新たな課題への学術的・実践的な取り組みを進める中で、「過疎」の歴史的研究、国際比較に取り組む必要性を強く実感してきた。今後も、実践と研究を結び付ける活動を展開していきたい。

平成30年度活動報告書(PDF)
平成30年度収支決算報告書(PDF)