研究目的

小規模自治体研究所は、平成の大合併の時代にあっても、自立の道を選んだ小規模自治体が、その住民とともに行う持続可能な地域づくりをサポートしてきた。とりわけ、東日本大震災後には、それまで行ってきた、県内外の各自治体の首長や職員たちとの研究会・シンポジウムの開催といった学術的な研究・交流活動に加え、避難指示地域の女性農業者たちとともに「かーちゃんの力・プロジェクト」を立ち上げるなど、実践的な課題にも大胆に取り組んできた。東北地方のみならず、全国的にも珍しい「小規模自治体」に焦点を絞った研究所として、持続可能な農村地域・地方都市のあり方について、国際比較も加えた学術的研究とともに、現場の課題に即した実践的な活動にも取り組んでいる。

研究メンバー

研究代表者(研究所長)

  • 塩谷 弘康(行政政策学類教授/うつくしまふくしま未来支援センター副センター長)

 

研究分担者(プロジェクト研究員)

  • 千葉  悦子 (副学長・行政政策学類教授)
  • 岩崎 由美子 (行政政策学類教授)
  • 佐々木 康文 (行政政策学類教授)
  • 大黒  太郎 (行政政策学類准教授)

 

連携研究者(プロジェクト客員研究員)

  • 松野  光伸 (福島大学名誉教授)
  • 鈴木  治男 (元鮫川村職員)

 

研究活動内容

平成27年度の本プロジェクト研究所の研究・実践活動は以下のとおりである。

1.「かーちゃんの力・プロジェクト」支援

本年は、2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故により避難指示が出された地域の女性農業者たちと協働で始めた「かーちゃんの力・プロジェクト」も5年目となり、これまでの活動の成果に対して、社会的な評価を得た年となった。本研究所が支援する「かーちゃんの力・プロジェクト協議会」は、9月に、第56回福島県農業賞(農業10傑)という伝統ある賞を受賞した(「集団活動部門・農村女性活動の部」)。放射能汚染で最も難しくなった「農業」分野で、それも避難地域の住民が主体となって作ってきた活動として、「かーぷろ」の活動が評価されたことは、困難に次ぐ困難ななか、なんとか活動を支え、プロジェクトをつないできた当研究所としても、目に見える成果となった。また、「かーちゃんの力・プロジェクト協議会」は、同月、福島民報社が主催する「ふくしま産業賞」の銀賞も受賞したが、「避難区域の食の伝統を守る」ことが評価されたことは、「地域づくり」という本研究所の研究目的が、活動のなかに生きていることを示しており、大きな成果となった。

平成27年度は、受賞という形で社会的評価が公に認められた年であったが、福島大学の学生とともに行う仮設住宅でのイベントの企画・実施など、震災直後からこれまで続けてきた地道で継続的な活動を、本年も行った。

 

2.福島市内の地域づくり活動

当研究所では、自治体や地域からの依頼・要望にこたえる形で、研究メンバー単独で、あるいは福島大学生とともに、地域づくりを積極的に支援している。平成27年度は、震災前から金谷川地域の住民と継続的に行っている「Uプロジェクト」に加え、福島市内田沢地区の依頼による「田沢地区プロジェクト」も実施し、田沢地区の活性化に向けた企画への協力、将来構想の作成などに取り組んだ。また、会津美里町から、受託研究「会津美里町地域創生総合戦略策定に関する調査研究」を受けて、町の人口動態や行政区の実態調査に基づき、地域創生のための提言を行った。

さらに、こうした知見を教育に反映させるべく、小規模自治体研究所のメンバーが中心となって、総合科目「小さな自治体論」を開講した。

 

3.避難指示から指示解除へ

放射能災害による政府による避難指示が解除される方向性が強まるなか、避難生活の長期化による問題に加えて、新たな課題が生まれているが、本研究所では、そうした課題に応えるための研究・実践活動も始めている。とりわけ、帰村後の住民、とりわけ高齢者の生活をどう支えるのか、また、除染後の農地をどのように維持・活用するのかは大きな課題である。本研究所が長年にわたり連携してきた飯舘村では、飯舘村のNPO法人「まごころ運営協議会」との連携のもと、住民が住民を支える仕組み作りについて、関係機関との協議を開始している。また、合わせて、本研究所を柱に飯舘村と大学との連携協力関係の強化・充実についても、村側と協議が進行中である。

 

4.新たな研究活動の展開

持続可能な農村地域、小規模自治体の仕組みづくりを研究する当研究所は、震災前に行ってきた自治体首長・職員との勉強会に、震災以降続けてきた上記の実践活動の積み重ねを加えたなかで、「過疎」の歴史研究、国際比較にも取り組む必要性を感じてきた。原発事故が福島で起こったことは、「過疎」問題と無縁ではないし、農村地域は世界中どこにでもある。過疎を歴史的に振り返り、福島の「過疎問題」を国際的な文脈の中で比較研究することは、本研究所が扱うべき研究課題である。
被災地福島が直面する課題に実践的に取り組みつつも、研究活動の新たな展開も目指している。

平成27年度活動報告書(PDF)
平成27年度収支決算報告書(PDF)